土壌を肥沃にしたり、作物に病虫害を与えるセンチュウなどを抑制する目的で栽培され、土にすき込まれる作物の総称を緑肥作物または、緑肥植物といいます。

緑肥作物の主なはたらき

  1. 有害線虫の抑制 

    植物に寄生して被害を与える線虫には、ネグサレセンチュウ、ネコブセンチュウとシストセンチュウの三属が挙げられます。

    これらの線虫の頭部に、大きな口針といって細長い吸収口があり、植物に寄生・侵入し、被害を及ぼします。

    これらの線虫が作物の根に寄生すると、瘤が生じたり、組織が壊死して奇形やシミができてしまいます。

    なぜ緑肥作物を植えると線虫が減るのかというと、緑肥作物の根の中に、線虫の発育を制限したり、線虫自体を殺して死滅させる物質があるからです。

  2. 土壌病害を抑制

    作物の根っこは、ムシゲル (多糖類を主体とする有機物)という物質を放出しており、ムシゲルは根っこの周りに生息する微生物のエサとなります。

    また、そのムシゲルをエサとする微生物は、土壌中の有機物を分解、ビタミンやホルモンをつくり、作物が元気に育つことに役立っています。

    緑肥作物の根っこによってもたらされる有用菌が、作物の健全な生育に寄与するため結果的に病気が抑えられるという仕組みです。

    つまり、作物の根っこと土壌中の微生物は相互依存関係にあります。

    作物に着生(付着)する有用菌の主なものとして、空気中の窒素を固定する「根粒菌」と、リン酸の有効利用ができる「菌根菌」があります。

    とりわけ菌根菌の着生率が高いのが、ヒマワリです。

    続いて、トウモロコシなどのイネ科作物、クローバーなどのマメ科作物です。

    したがって、ヒマワリやマメ科緑肥の後に、小麦、ジャガイモ、トウモロコシなどを作付けすると菌根菌の働きで多収が期待できます。

  3. 土壌の団粒構造化を促進

    緑肥作物の固い土に突き刺さるように伸びた根はによって、その周りに柔らかな土の粒々ができています。

    この粒状の土の構造を団粒構造といいます。
    団粒構造になっている土は、土の中に隙間があるので通気性、保水力や保肥力があり有用微生物群も増えます。また、土壌中の酸素も豊富になります。

    なぜ、緑肥作物を栽培するだけで柔らかい団粒構造が土中にできるのでしょうか?

    その主な理由として無数に深く伸びた根が、やがて土の中で分解され穴が開いてその部分が空洞になるからです。

  4. 空気中の窒素を固定

    マメ科緑肥作物は、根に根粒菌が着生し、空気中の窒素を固定して土壌を肥沃化します。

  5. 透水・排水性の改善

    土壌の透水性や排水性は、大雨後の水の引き方でわかります。
    深根性のマメ科作物やイネ科作物は、土壌中に深く侵入して根を張るため、透水性や排水性を高めます。
    緑肥作物の根が土の中で分解された時に、根があったところが空洞なるため透水性がよくなるのです。

  6. 防風作物として

    風が強い地域においてエンバクが利用できます。
    また九州では茶畑に風よけとして播種した三尺ソルゴーが台風の潮風と塩害を防いだ事例もあります。

  7. 農村の景観美化
    ダイズシストセンチュウ対抗作物としても利用されるクリムソンクローバーは、きれいな深紅の花が咲きます。
    また、紫色の花が咲くアンジェリアは、ネギの緑肥やミツバチを寄せる蜂花作物としても利用されています。


昔は、稲刈りが終わった田んぼにはレンゲの花畑が広がっていて、小さい頃は、そのレンゲの花を編んでティアラのような花飾りを作ったものです。

当時は、田んぼだったところに何故レンゲの花畑が出現していたのか知るよしもなかったのですが、そこにはちゃんと意味があったんだなぁと思うと先人の知恵にただただ感心するばかりです。

緑肥作物は、このようにさまざまな効果がある上に、環境にもやさしく農業資材としてもたいへん経済的です。

是非、あなたの畑や菜園にも取り入れてみてください。